慰謝料とは、法的に「不法行為によって被った精神的な苦痛の金銭的評価」のことであり、法的に不法行為が成立する場合でなければ慰謝料請求権は発生しません。つまり、不貞行為などの事実が証明できなければ慰謝料請求権は発生しないのです。
では、探偵社や興信所に依頼しきちんとした証拠がなければ慰謝料請求をすることができないのか?というとそうではなく、自分で探した証拠で慰謝料請求できた事例もできなかった事例も数多くあります。今回はそういった事例を紹介していきます。
目次
1.自分で探した浮気の証拠で慰謝料を請求できた事例
性的関係を示すLINEのやりとりを発見
夫の携帯を覗き見ることが出来て、LINEの内容を確認したところ
「好きだよ」
「この前のプレーは燃えたね❤️」
「君の体を思い出してまた会いたくなってる」
「ギュっとしてほしい」
などの性的関係を示すようなLINE内容を発見。自分の携帯にデータを転送して、その後その愛人女性に直接交渉し300万円の慰謝料にて示談した。参考:LINEの証拠で、慰謝料請求が成功した事例【実際の証拠写真付】
この方のように、弁護士に依頼せず自分で直接交渉しようと思う方は「愛人に対して自分で示談交渉して慰謝料請求する方法【事例付】」がとても参考になると思います。
車にGPSを取り付けた上で、カバンにICレコーダーを仕込み性行為中の音声を録音した
GPSをレンタル業者から2週間レンタルし、車に取り付けスマートフォンから逐一位置を確認していたところ、ラブホテル街に3時間ほど反応していた。カバンに仕込んでいたICレコーダーの録音内容を聞いたところ、ラブホテル街に反応していた時間帯の内容は性行為に及んでいる様子が録音されていた。
これを元に行政書士に依頼し、愛人女性に内容証明を送り200万円の慰謝料の支払いを受けた。
愛人との性行為を撮影した動画を発見
たまたま発見したUSBメモリーを確認したところ、愛人女性との数々の写真の他、性行為に及んでいる動画があるのを発見した。
弁護士に依頼し、愛人女性に対し400万円の慰謝料請求を行い、250万円で合意し示談となった。
弁護士の探し方や選び方が知りたいという方は「浮気問題や離婚問題に強い弁護士の選び方」をご覧下さい。
愛情表現を含むメールやラインだけで不貞行為(不法行為)が成立していると認められた判例
夫の携帯電話の中に「俺の彼女はきみで、きみの彼氏は俺なんだから」等のメールを発見した妻が、浮気相手の女性に対して500万円の慰謝料請求を行った事例。
これについて裁判所は「このようなメールは、性交渉の存在自体を直接推認するものではないものの、浮気相手が好意を抱いていたのは明らかであり、なおかつ身体的な接触を持っているような印象を与えるものであり、これを妻が読んだ場合、婚姻生活の平穏を害するようなものといううべき」として、不法行為の成立が認められました。
ただ、その行為の違法性は軽微とされたためか慰謝料の金額は定額での成立になっています。(東京地方裁判所 平成24年11月28日)
※上記の事例は、あくまで成功事例で、皆様が見つけた証拠で『確実』に慰謝料を請求できるかわかりません。見つけた証拠で慰謝料を取れるかどうかの確認をしてみたい方は、一度お問い合わせ頂ければ慰謝料を取れるか確認することは可能です。
2.自分で探した浮気の証拠で慰謝料を請求できない事例
愛人からの手紙を発見し会いに行ったが否定され、その上警察を呼ばれた
愛人からの手紙を発見。感情的になり興奮状態で愛人女性に会いにいくも、関係を否定された上に馬鹿にしたような発言に逆上してしまい、全く話し合いにもならない上に警察を呼ばれてしまい、夫からも激怒されてしまって、関係を追求するどころか逆に立場が悪くなってしまった。
浮気の事実を自白した音声をICレコーダーで録音したが、後日自分では無いと否定された
浮気していることを自白した内容を録音した。後日その内容を書面にし署名捺印を求めたが拒否した上に録音内の発言は自分では無いと言い出す。声紋鑑定しても証拠になりづらいことを知ったのか開きなおり、結局そのまま否定され続けた。無料弁護士相談に相談にいくも、現状では難しいと言われ泣く泣く諦めることとなった。
ラブホテルのメンバーズカードとレストランの領収書を発見
財布からラブホテルのメンバーズカードや、おしゃれなお店での2名分の領収書を発見し、それを見せて配偶者に追求したが「同僚の物でありたまたま預かっただけ」と言い逃れされる。そんな筈は無いもののそれ以上追求する材料は無い上に、逆ギレし始め追求出来なくなってしまった。
メールを覗き見ることがプライバシーの侵害であり、不法行為として認めれなかった判例
「愛してる」「大好き」等の親密な男女間でしかあり得ないような愛情表現を頻繁に交わしていることが不法行為にならないか争われた裁判にて、性交又は性交類似行為には至らないものの、婚姻を破綻に至らせる他異性との交流・接触も損害賠償請求権を発生させる余地がないとは言えない。が、私的なメールのやり取りは、たとえ配偶者であっても、発受信者以外の者の目に触れることを通常想定しないものであり、性的な内容を含む親密なメールによる損害賠償請求は配偶者や浮気相手のプライバシーを暴くものである。
そして、メール内容的にも婚姻生活を破綻に導くことを意図しているといえない為、損害賠償請求を正当化するような違法性を有するものではなく不法行為の成立を認めることは出来ない。とありました。(東京地方裁判所 平成25年3月15日)
3.慰謝料を請求するために必要な証拠とは何か?
継続的な肉体関係を証明出来るものが必要
慰謝料を請求するには、不貞行為(原則として民法上の不法行為(民法709条)に該当する違法な行為)を証明する必要があり「配偶者ある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをがあった場合」です。具体的には、ラブホテルに出入りする様子や、愛人宅への出入りする様子を複数回確認しておく必要があります。
ただ単に、手を繋いで歩いていたり、キスをする様子を確認したとしても、それだけでは厳しいと言えます。
手をつないでいたことが不貞行為として認められなかった判例
東京地方裁判所 平成20年10月2日の裁判例として、「配偶者と浮気相手が手をつないでいたとしても、そのことから当然に不貞関係の存在が推認されるものではない。」として300万円の慰謝料請求に対して請求棄却とされました。
4.慰謝料の請求額を増やすために必要になる資料とは?
不貞関係が始まった期間が証明出来るような領収書、写真、メールなど
不貞関係がどれだけの期間存在しているのかを証明できるものです。長期であればあるほど悪質であるとみなされます。期間の長さによっては金額が増える傾向があります。但し、長期だからと言って大幅に増額される訳ではありません。
不貞関係が始まった時点での夫婦関係の円満さが分かるもの
不貞が始まった時点では夫婦関係が円満であり、破綻によって不貞が始まったのではないと証明出来るような夫婦間でのメールや写真など
不貞が始まったことで夫婦関係が急激に悪化したことを証明するもの
不貞によっていかに配偶者の言動が悪化していったか、を証明するような日々の言動を記録しているような日記など
不貞関係をやめるように言われた経緯があること
配偶者や愛人に対して不貞関係を問い詰め、もう2度とやらないと言われたことを証明出来るような音声や誓約書(示談書)など
慰謝料算定の具体的要素
配偶者と愛人の身分関係等
- 年齢
- 婚姻期間(結婚式の日、婚姻届出の日)
- 子の年齢及び養育状況
- 学歴
- 職業・地位
- 収入
- 資産の有無、額
配偶者と愛人との不貞(情交)関係が始まった時点での夫婦関係
- 婚姻関係が内縁関係か婚約関係か
- 夫婦関係が円満であったかどうか
- 事実上破綻していたか
- 事実上破綻とは言えないまでも相当程度冷却していたか
- 同居か別居か
- 本人も別人と不貞関係にあったか
配偶者と愛人との不貞関係が始まった経緯
- 愛人が婚姻の意思があると偽り配偶者に言い寄った
- 配偶者が愛人に「離婚する予定」と告げ愛人がこれを信じた
- 配偶者が自ら婚姻中で子供がいることを愛人に告げなかった
- 愛人が積極的に配偶者を誘惑した
- 配偶者が上司と部下の関係を利用して愛人に言い寄った
配偶者と愛人の情交関係の内容
- 期間・回数
- 配偶者と愛人のいずれが主導的であったか
- 配偶者と愛人が同性していたか、配偶者が愛人の住居を借り受けたりしていたか
- 配偶者と愛人との間に子がうまれたか、配偶者は認知しているか
- 愛人が配偶者の本妻(本夫)として振舞っていたか
配偶者と愛人との不貞関係を知ってからの態度
- 愛人に対して配偶者との関係を絶つよう申し入れたか
- 配偶者に対して愛人との関係を絶つよう申し入れたか
- 配偶者や愛人が「今後交際しない」などという念書を交付しているか
- 配偶者に対して離婚することを申し入れたか
- 配偶者を許しているか
- 愛人に対する報復行為の有無、内容
- 愛人を提訴するに至るまでの期間・事情
不貞関係によって夫婦及び子に与えた影響
- 離婚に至ってしまったか
- 夫婦間が悪化した原因が不貞行為以外にもあるか
- 離婚したとしてその内容は(財産分与及び慰謝料等の内容)
- 子の親権者・監護者
愛人の身分関係等
- 年齢
- 配偶者・子の有無
- 学歴
- 職業・地位
- 収入
- 資産の有無、額
まとめ
探偵社や興信所に調査を依頼することは料金面などでとてもハードルが高いと思いますが、自分で集めた証拠で行動してしまうことは一か八かの危険な行為であるとも言えます。自分達で素行調査を試みる人みいますが、やはりプロの探偵社のような証拠を取得することは不可能に近く、その上調査が発覚してしまいガードを固められてしまって、撮れたであろう証拠が撮れなくなってしまい泣き寝入りしたという事例が非常に多くあります。
浮気の事実を確信し証拠が取れる可能性が高いのであれば、お守りの為にも探偵社に依頼してきちんとした証拠を撮っておくと安心して行動していけます。
探偵者や興信所の選び方について詳しく知りたい方は「探偵者に浮気調査を依頼する前にチェックすべき23のポイント」をご覧下さい。