ある日突然、妻が子供を連れて家を出て行ってしまい、しばらくしてから婚姻費用(生活費)を要求してきたり、離婚調停を申し立ててきたりする事例が数多くありますが、いざその当事者になってみると、どのように対応していけば良いのかわからないというのが正直なところだと思います。
突然、妻が子供を連れて家を出て行ってしまった際に
①出ていった理由が不自然
②離婚を急いで要求してくる
上記に該当する場合には、不倫している可能性があり、実際に調査してみたら交際している男性が出てくることが多くあります。
出ていった側は本当の理由が言えない為に、ありもしないDV(ドメスティックバイオレンス=家庭内暴力)やモラハラを理由に、旦那側を悪者にでっち上げる事例があります。だからこそ、もし異性の存在がある場合には、早急にその証拠を取得していく必要があります。
さらに、親権をとろうと思ったら相手の不貞の証拠が重要にもなってきます。
連れ去られた子供の親権を父親側が取るのは本当に至難の技となります。しかし、親権を絶対に取得できないわけではありませんので、親権を取得する方法や事例をご紹介していきます。
目次
1.妻が出て行く前の様子を思い出してみる
妻が家を出て行く場合には、男性に比べてある程度事前に計画を立てて実行に移す方が多いです。
やはり住む所が確保されていることが大事ですし、別居後も生活出来るだけのお金があったり、入ってくる予定があるからこそ出て行きます。
出て行く前の様子をよく思い出してみて、下記の項目に該当している場合には、かなり高い確率で不倫相手の男性が存在していると言えます。
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2.妻の居場所が分からない場合の調査方法とは?
妻が出ていった後に現在の住所が不明な場合、調査の方法は非常に限られてきます。
出ていってすぐに住民票を移す対象者はほぼいないので、公簿上(住民票や戸籍など)からの確認は不可能となります。出ていった先の住所には、実際に住んでいなかったという場合には、郵便物の転送先がどこか調査することもあります。
出て行く先で一番多いのが実家ですが、男性の影がある場合には実家にいない場合もあります。
仕事をしている方であれば、職場からの追跡により現住所の特定が可能ですが、専業主婦の場合には調査が難しくなります。
よく行われている調査方法としては、離婚の話を進めるという口実で対象者(妻)を呼び出して接触してもらい、そこから追跡を行います。もし接触すら拒絶してくるようであれば、最後の手段としては調停場所となる家庭裁判所からの追跡となります。
離婚調停には、ほとんどの方がご自身で出席されることになりますので、ここで確認出来ます。ごく稀に、弁護士に委任して本人が来ないケースもありますが、本当に稀です。そもそも離婚調停時において弁護士に依頼するケースはまだまだ少ないです。
離婚調停は、夫婦双方の意見を聞くことになりますが、来る時間も帰る時間も夫婦一緒ではありません。申し立てている側が最初に意見を聞かれることが多く、申し立てられた夫側が裁判所に呼ばれている時間の1時間半前には念のために探偵は張り込みを開始します。
地域によっては家庭裁判所の出入り口が多く、探偵は申し込み部屋、エレベーターホール、出入り口の3点にそれぞれ配置することになります。
3.いきなり出て行った妻が離婚調停を申し立ててきた場合【浮気調査事例①】
①実家に帰ると言っていたが実家にいないことが判明し調査依頼
妻がいきなり性格の不一致などを言い出し、実家に住むと言って出ていき、しばらくして離婚調停を申し立ててきたケースがありました。
依頼者である旦那様に話を聞いてみると妻の言動がある時期を境に変化していると分かりました。その時期とは会社の異動でした。異動してから帰宅時間が遅くなりだし、飲み会といってくる頻度が増え、休日出勤も増えていきました。
その流れで出て行き、不自然に思った旦那様は時折奥様の実家を見に行かれますが、奥様の部屋と思われる場所の電気がついていないことが多く本当に実家に住んでいるかも疑わしくなり、探偵社に相談に来られました。
②離婚調停日に家庭裁判所から尾行し判明
探偵として話を聞いた時点で男性と同居しているのでは?という印象を持ち、ひとまず現状の奥様の行動を追跡しようと思いましたが、勤務先は巨大な省庁であり、そこから確認することはほぼ不可能でした。そこで次回の調停に合わせ、家庭裁判所から調査を開始するという方法で調査を実施しました。
調停当日、探偵は家庭裁判所の入り口、エレベーターホール、調停部屋があるフロアに張り込み、奥様の来所を確認した後、調停が終わってからの追跡を行いました。突然車が出てくることを警戒していましたが幸い電車で行動した為、追跡は難なく行うことができました。明らかに実家方面ではなく、とある駅を降車しあるマンションに入っていくことを確認します。入っていった部屋の郵便物を確認したら男性の名前が出てきました。
翌日、朝から調査を開始したらその部屋からは奥様と男性が出てきました。
探偵は男性を追跡しましたが、奥様と同じ勤務先でした。夫は勤務先が一緒の男性と同棲している状態であり、いきなり家を出ていったのも行く場所があったからでした。
結果を知った依頼者様は激怒され、次回の調停で証拠資料を提出し、絶対に離婚をしないという主張をされました。
④高速道路の利用明細で、別居前からの浮気であることを証明する
このケースで重要になるのが、家を出ていく前から男性とは関係があったのか?という点です。当然奥様側は依頼者様との婚姻関係が破綻後の関係であった、と主張してくることになります。
今回のケースでは出て行く前からの関係を証明する資料として、高速道路の利用明細書がありました。というのも、まだ依頼者様と同居している時の高速道路の利用明細書で、今回判明した同棲しているマンション近くの出入り口を高い頻度で利用していることが分かったのです。これにより、依頼者様は男性に慰謝料請求され、現状では離婚せずに元通りに生活しておられます。奥様側のご両親も娘の行動に対して厳しく対応され、協力していただけた点も大きいと言えます。
⑤調査料金と期間
今回の調査は、愛人宅への出入りを証拠とすることになりましたので、念のため2泊宿泊していることを撮影しました。愛人宅での不貞を証明する場合には、夜間の長時間の張り込みが必要になります。
調査時間 | 調査料金 |
30時間 | 60万円 |
調査期間
調査開始から終了までの期間としては2週間でした。
4.妻がいきなり出て行き離婚調停を申し立ててきた場合【浮気調査事例②】
①パートを始めてから様子が変化し別居が始まる
DVを理由に離婚調停をおこし、そのまま離婚を成立させたいという思いから離婚調停を申し立ててきたケースです。
依頼者であるAさんは38歳の男性で、思い返してみると、出て行く前から言い争いが絶えなかったのですが、出て行くほどの理由はありませんでした。
まだ小さい4歳になる子供を連れて実家に帰ってしまい、そこから子供に合わせてももらえず、共有の財産も持ってでていくという状態でした。
依頼者である旦那さまは自営業で飲食店を経営されていることもあり、帰宅が遅くそれが出ていった原因と言っているのですが、奥様は出て行く3ヶ月前から近所のスーパーにパートに行き始めており、その頃から自分が家にいない時に子供を実家に預け外出している様子でした。
話をするごとに離婚の要求がエスカレートし、実感の家族全員にあることないことを言って旦那様が悪人になってしましまいました。そして、どうしても腑に落ちない点も多いことから浮気調査の依頼を受けました。
②調査によりパート先の店長との浮気が発覚
調査は実家からスタートし、子供を幼稚園に預けてからの奥様の様子を見ることになりました。子供を預け、パートに行くものの終わってからもすぐに帰宅せず、とあるマンションに入っていくことを確認しました。
そのマンションの住人を確認した所、パート先の男性店長だったことが判明しました。浮気調査を行った結果、出ていったのは男性が原因であることが分かったのです。
③親権は諦め、慰謝料200万円を回収
結果旦那様は、奥様と交際男性に対して慰謝料請求し、奥様からは財産分与から差し引いた形となり、男性からは200万円の支払いがありました。
親権も望まれていましたが、すでに別の環境で生活していることや、旦那様の仕事状況では養育環境として望ましく無いと判断され諦める形になりました。
④調査料金と期間
今回の調査は、まず不倫の事実があるかどうかが判明するまでに時間が必要であった上、不倫が判明してから証拠にする為に愛人宅への出入りを、念のため3泊分宿泊していることを撮影することになりました。その為、長時間に及ぶ調査時間となりました。
調査時間 | 調査料金 |
40時間 | 80万円 |
調査期間
調査開始から終了までの期間としては3週間でした。
5.監護継続性の原則により子供を連れて家を出ていった方が有利になる
ある日突然に母親が子どもを連れ去り家を出た場合、子どもを連れ去られた父親が懸命に親権や面会を求めたとしても、実はこの時点ですでに父親は圧倒的に不利な立場に立たされています。
欧米では、離婚後に共同親権が認められていますが、日本は父親か母親のどちらか片方だけに親権が認められる単独親権となります。どちらが親権を得るかは様々な要素から判断されますが、なかでも「監護継続性の原則」が問題を複雑にしています。
監護継続性の原則とは、子どもの現状を尊重し、離婚後もできるだけ環境が変わらないほうに親権を認める考え方で、母親が子どもを連れて別居した状況で調停や裁判に入れば、子どもはそのまま母親に養育されたほうがいいという判断に傾きます。
家に戻ってしまうと監護継続性を理由に親権を得る戦略が取りづらくなるので、子どもを連れて出ていった母親は元の家に戻らず、父親に子どもを会わせようとしなくなります。
監護継続性の原則は調停や判決で重視される空気があります。監護継続性という要素が母親による子どもの連れ去りを助長しています。
6.父親が親権をとることが出来た、フレンドリーペアレントルールという可能性
妻が子供を連れて出て行った場合において父親側の親権は絶望的になるということをお伝えしましたが、平成28年の3月、そのような現状に対して画期的な判決が千葉松戸支部で出ました。
子どもを連れ去られた夫が妻と親権を争っていた離婚訴訟で、面会交流を積極的に認めた夫に親権が認められたのです。妻が夫に提案した面会交流は月1回でしたが、夫は「自分が親権を取れば子を妻に年間100日程度会わせる」と主張し、裁判所は夫の提案を採用したほうが子どもは両親の愛情を受けて健全に成長すると判断したのです。
この判決は相手に寛容性を示した側が有利になる“フレンドリーペアレントルール”に基づいています。
このルールを適用すると、親権がほしければ相手との面会交流を増やす必要があるので、子どもは離婚後も両方の親と会える理想的な状況に近づいていくのです。
これは、離婚相手に優しい親が親権を得やすくなるという一つの事例です。親権のない側が子どもと会えるのはせいぜい月1~2回程度ですが、子どもを連れ去られてしまうと、残された側は親権を失い子どもにもなかなか会えないという理不尽な現状がありますが、今回の現状に一石を投じるような判決により今後の傾向に変化が見られるかもしれません。
※フレンドリーペアレントルールとは「友好的親条項」もしくは「非監護親に対する寛容性の原則」と呼ばれており、別居している親と友好関係を保てる親を同居親決定の際に優先することを意味しています。
7.要注意!いきなり子供を連れ去ると罪になる?
急に子供を連れて出た上、なかなか面会すらさせてくれずに困っている場合であったとしても、絶対にやってはいけないのが、どこかで待ち伏せして母親の同意なく子供を連れ去ってしまうことです。
よくあるのが、妻に子供を連れて出て行かれた後に、親権欲しさに父が子供の保育園や幼稚園に迎えに行き、そのまま連れて帰るというものですが、こういった場合においては刑法224条の未成年者略取及び誘拐になる可能性があります。
略取とは力づくで奪い取ることですが、法的には暴力や脅迫、その他の強制的な手段でこれまでの生活環境から離脱させ、第三者の支配下におくことになります。
たとえ自分の息子であっても連れ出す場合には、現状で子供を引き取って世話をしている妻の同意が必要になります。ですので、理不尽に子供を連れて出ていった相手に対して何とかしたい気持ちもわかりますが、絶対に連れ去ってしまわない方が良いでしょう。その後の立場が悪くもなります。
まとめ
今回説明したように、突然出ていった妻と一緒に子供がいる場合において、そこから父親が子供を連れ戻すことは非常に大変です。別居するときに子供を手放してはいけない、というのが法律関係者の中での暗黙おルールでもあります。
しかし現在では、子供の意思を出来るだけ尊重しようという傾向が強まっており、今回紹介したような子供の幸せにとって一番の環境と認められれば父親の親権取得も可能になりつつあります。
いきなり妻が出て行った場合には、まずは冷静に同居時の様子を思い出し、怪しい点があるようであれば証拠を撮っておくことが大前提となります。証拠も無くただただ相手の行動を待っている状態では立場が悪くなるだけなのです。
又、別居後も婚姻費用を支払い続ける義務はありますので、早めに対処していくことをオススメいたします。