浮気相手に自分で慰謝料請求は可能?示談交渉の方法と成功・失敗事例
浮気相手に自分で慰謝料請求は可能?示談交渉の方法と成功・失敗事例
探偵社へ浮気調査を依頼し、不貞の証拠が取れた後、多くの方が浮気相手(愛人)へ慰謝料請求を検討します。実務では弁護士を通して進めるケースが一般的ですが、「どうしても自分で話をつけたい」と考える方がいるのも事実です。
ただし結論から言うと、自分で交渉するほど“地雷”が増えるのが慰謝料請求です。こちらに正当性があっても、やり方を誤ると「脅された」「押しかけられた」と反撃され、回収どころか紛争が拡大することがあります。今回は、自分で進めたい人が最低限知っておくべきポイントを、メリット・危険・対策の順に整理します。
INDEX
1.自分で慰謝料請求をする4つのメリット

(1)自分で慰謝料請求をすると弁護士費用がかからない
通常、慰謝料請求を弁護士に依頼した場合、弁護士費用は平均で60万円前後になることが多いです(内訳は「着手金+成功報酬」)。
もちろん請求額や事案の難易度によって上下しますが、相場として極端に大きく変わるケースは多くありません。
一方、自分で慰謝料請求を行う場合は、弁護士費用が発生しないため実質コストは0円です。費用面だけを見れば、ここが最も分かりやすいメリットになります。
(2)自分で慰謝料請求をすると気持ちをダイレクトに伝えられ、再発防止につながる
弁護士に依頼した場合、基本的に相手と直接会話することはありません。やり取りは書面や弁護士を介した連絡が中心になります。しかし自分で直接面談する場合、不倫が続いていた期間に自分がどんな気持ちで過ごしていたのか、家庭がどれほど傷ついたのかを、当事者としてそのまま伝えることができます。
特に、配偶者の不倫は自分だけの問題ではありません。子供がいる家庭では、子供にも大きな精神的苦痛や不安を与えることがあります。そういった現実を面と向かって伝えることが、相手に「二度と繰り返してはいけない」と強く自覚させるきっかけになり、再発防止効果につながる場合があります。
(3)自分で慰謝料請求をすると慰謝料額が大きくなる場合がある

これまでの経験上、弁護士による慰謝料請求で回収できた平均額は250万円程度です。弁護士が入ることで「法律家が介入している」という圧はかかりますが、その分、交渉は現実的かつ常識的なラインに収束していく傾向があります。
一方で、当事者同士の示談交渉は、良くも悪くも「双方が合意した金額」がそのまま慰謝料になります。極端な話、相手が強く恐れたり、早期に終わらせたい心理が働いた場合、相場以上の金額で合意できるケースも実際にあります。
そのため、自分で動いたほうが結果的に慰謝料が大きくなる場合がある、という点はメリットとして挙げられます。
(4)自分で慰謝料請求をすると解決までの期間が短い
弁護士に依頼した場合、相手とのやり取りは書面中心になり、回答待ち・条件調整・合意書の作成などの工程を踏むため、平均的な解決期間は半年程度になることが多いです。
一方で自分で実施する場合、面談の場で条件を詰め、合意書の取り交わしまで一気に進められれば、会ったその日に決着がつくことも珍しくありません。スピード感という意味では、自力交渉は最も早く終わる可能性があります。
2.浮気相手の愛人に対し慰謝料請求を自分で行うことの4つの危険

(1)自分で直接交渉して慰謝料合意に至るのは、想像以上に難しい
浮気相手と直接面談して慰謝料の話を進める場合、話し合いは当然ながら法律の専門家を介さない素人同士の交渉になります。そのため、冷静に条件を整理し、合意に至るまでには相当な労力と精神的負担がかかります。
特に問題になりやすいのが、相手が誠実に対応しないケースです。事実を否定したり、責任を回避するような発言を繰り返したり、開き直った態度を取られると、被害者であるこちら側が感情的になってしまい、話し合い自体が成立しなくなることも少なくありません。
その結果、交渉は平行線のまま決裂し、時間と労力だけを消耗して終わってしまうケースも多く見られます。
(2)交渉が行き過ぎると、強要罪や不退去罪に該当する危険がある
慰謝料を支払わせたいという気持ちが強くなりすぎると、知らないうちに法的な一線を越えてしまうことがあります。交渉がエスカレートし、相手に警察を呼ばれてしまい、結果として自分の立場が不利になってしまった、という事例も決して珍しくありません。
特に該当しやすいのが、「どうしても合意させたい」という思いから、示談書や合意書に対して強引に署名や捺印を迫る行為です。このような行為は、状況次第では刑法223条に定める強要罪に該当する可能性があります。
また、相手の自宅を訪問したものの面会を拒否され、立ち去るよう求められたにもかかわらずその場から離れなかった場合には、刑法130条の不退去罪に該当するおそれもあります。
たとえこちらが被害者であっても、対応を誤れば「違法行為を行った側」として扱われてしまう危険がある点は、十分に理解しておく必要があります。
刑法223条 強要罪
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
刑法130条 不退去罪
他人の住居、建造物、艦船に、適法に又は過失によって立ち入ったのち、要求を受けたにもかかわらず退去しなかった場合に成立します。法定刑は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。
その上その話が配偶者が知ることになり、関係修復が不可能になるほどに悪化してしまったということにもなりかねません。
(3)自分で示談交渉して慰謝料請求を行うのは、精神的な負担が大きい

自分で示談交渉を行う場合、事前に約束を取り付けて会うことはほとんどなく、相手の行動に合わせて待ち伏せの形で接触することになります。そのため、長時間の張り込みが必要になるケースも少なくありません。
実際に会えたとしても、慣れない交渉を一人で進めることになり、長時間に及ぶ話し合いになることもあります。感情を抑えながら条件を詰めていく作業は非常に消耗し、精神的な負担は想像以上に大きいものです。
(4)一度合意しても、後から破られる可能性が高い
当事者同士で慰謝料額に合意し、書面を作成したとしても、実際に支払いが行われないケースは珍しくありません。連絡が取れなくなり、そのまま放置されることもあります。
また後になって、「脅されて署名した」「気が動転していた」「金額が不当だ」などと主張され、合意自体を否定されることもあります。実際に、浮気相手との合意書の効力が争われ、裁判で否定された事例も存在しています。
| 東京地方裁判所 平成19年8月30日 判示夫の不貞行為を確認した妻が、その浮気相手の女性宅に代理人と名乗る人物と共に訪れ、約6時間の間、合意書に署名捺印を迫られ、疲労困憊した浮気相手の女性は「慰謝料200万円、調査料等150万円の合計350万円」の合意書に署名捺印してしまった。
しかし、その後浮気相手の女性から、本件同意書への署名捺印は自分の意思を欠くものであるという申し立てがあり、裁判所の判決としては本件同意書に署名捺印を求めた行為はいわゆる強要罪(刑法223条)に該当しかねない行為であることから、同意書に基づく請求を法的に認めることは信義則上許されない、としました。 |
3.浮気相手に示談交渉で慰謝料請求を成功させるための3つのポイント

(1)慰謝料請求示談交渉の基本姿勢と考え方
まず最も重要なのは、感情的にならないことです。これは言い争いではなく、話し合いであり交渉です。相手を言い負かす必要はありませんし、一時の感情を優先させるべきでもありません。
相手と同じ目線で向き合うのではなく、一段上の立場から冷静に主導する姿勢が必要です。証拠が揃っている以上、法的に不利になるのは相手であり、こちらが負ける状況ではありません。
ただし、問題を長期化させ大事にすることは、双方にとって得策ではありません。愛人との問題は早期に決着をつけ、その後に配偶者との関係をどうするかを考えるべきです。そのためにも、「その日のうちに決める」という意識を持つことが重要です。
話し合いの中で、相手が「どこに知られることを最も恐れているのか(家族・職場など)」を見極められれば、再発防止の材料にもなります。こちらの真剣さと覚悟を伝えることが大切です。
(2)浮気相手との接触から話し合いの場までの誘導方法

基本的に、事前にアポイントは取りません。相手に考える時間を与えず、強い印象を与えるため、いきなり接触する形になります。
調査で把握している、相手が日常的に立ち寄る場所やルート上で待ち伏せします。その際は、あくまで「話し合いで解決したい」という姿勢を崩さず、拒否される場合には裁判になる可能性があることを示唆します。
証拠が揃っている以上、裁判になれば相手が不利であり、周囲に知られることで大きな影響が出ることも事実です。こちらも本意ではないが、できる限り話し合いで終わらせたい、というスタンスを伝えながら、話し合いの場所へ誘導します。その際、携帯電話で外部に連絡を取らせないよう注意が必要です。
(3)話し合いの場所・人数・事前に用意するもの
話し合いの場所は事前に決め、可能であれば予約しておきます。個室は避け、周囲に人がいる場所を選ぶことが重要です。後になって「脅迫された」と主張されるリスクを避けるためです。
同行者は原則として弁護士が望ましいですが、利害関係のない友人や親族であれば問題ありません。
用意するものは、
・朱肉
・誓約書(内容、日付、住所、氏名、捺印。印鑑がなければ右手人差し指)
・必要に応じて録音機
最低限、これらは準備しておくべきです。
(4)再発防止のため、接触禁止と違約金を明確にしておく
示談書には、今後一切会わない・連絡しないという誓約を必ず盛り込みます。面会・電話・メールなど、手段は一切問いません。
あわせて、違反した場合の違約金も定めておく必要があります。違約金の相場は、100万円〜200万円程度が一般的です。
4.不貞行為・慰謝料請求でよくある8つの言い訳と切り返し

(1)「結婚しているとは知りませんでした」
切り返し例
・メールややり取りはすべて把握しています。知らなかったという説明は通りません。
・その主張を続けるのであれば、法的な場で判断してもらうことになりますがよろしいですか。
・婚姻の有無を確認しなかったこと自体が過失と判断された判例もあります。
(2)「肉体関係はない。ただの同僚・友人です」

切り返し例
・では、肉体関係がなかった証拠を提示してください。
・ラブホテルや自宅への出入りは、不貞を推認する証拠として裁判でも認められています。
・こちらは裁判で通用する証拠を用意しています。
(3)「夫婦関係はすでに破綻していると聞いていました」

切り返し例
・私はこれまで、そして現在も夫婦関係を維持・改善しようとしてきました。
・その関係を壊した行為にあなたが関与した事実は変わりません。
(4)「誘われただけで、断れませんでした」
切り返し例
・成人している以上、自分の行動には責任が伴います。
・断れなかったという理由は、免責にはなりません。
(5)「そんなお金はありません」

切り返し例
・支払い能力の有無は、こちらの問題ではありません。
・あなたの行為による精神的苦痛に対する請求です。
・私や子どもが受けた影響を考えれば、この金額でも決して高いものではありません。
(6)「誰かに相談させてください」
切り返し例
・本日は話し合いで決着をつけるために来ています。
・ここで合意できない場合、次の手段に進むことになります。
(7)「あと○日待ってください」

切り返し例
・これ以上待つことはできません。
・本日決まらない場合は、こちらの判断で対応を進めます。
(8)「私だけの問題ではない。配偶者に請求してください」
切り返し例
・夫婦間の問題と、あなたの責任は別です。
・あなたは共同不法行為の当事者であり、法的に請求対象となります。
求償権とは?
愛人から慰謝料が回収出来た後、愛人から配偶者に対して請求することがあります。求償権と言われるものですが、求償権の放棄についても記載しておく必要があります。

5.自分で浮気相手と示談交渉し慰謝料請求を行った2つの事例
(1)浮気相手の愛人女性と示談交渉し、慰謝料200万円を回収したケース
香山様(仮名)は40代後半の女性で、学校教員をされています。会社員である夫が、同じ勤務先の契約社員の女性と不倫していることが判明し、浮気調査を依頼されました。調査の結果、週末の仕事終わりに待ち合わせをし、ラブホテルを利用している事実が確認されました。
香山様が「自分で慰謝料請求をしたい」と希望された理由は、浮気相手の女性が夫婦の自宅マンションにも出入りしていたことが分かり、それをどうしても許せなかったためです。
香山様は、女性の退勤時間前に勤務先付近で待ち、会社から出てきたところで声をかけ、ファミリーレストランへ誘導しました。
話し合いでは、調査結果を把握していること、行動をすべて把握していること、相手にも家庭があることを理解していることを冷静に伝えました。
口外しないことを前提に、当初希望していた300万円から減額し、慰謝料200万円で合意。事前に準備していた合意書に署名・捺印をさせ、後日全額が支払われました。

(2)浮気相手の愛人男性と交渉に失敗し、裁判に発展したケース
木村様(仮名)は30代前半の男性で、自営業の建設業をされています。専業主婦の妻が昼間に頻繁に外出し、身なりも派手になったことから不審に思い、浮気調査を依頼されました。
調査の結果、妻は子どもを幼稚園に預けた後、男性の自宅マンションに通っていることが判明しました。相手男性はIT系の自営業者でした。
事実を知った木村様は感情を抑えきれず、調査結果を聞いた直後に男性宅へ押しかけます。しかし面会を拒否され、マンション前で粘っているうちに管理人が介入し、最終的には警察を呼ばれる事態となりました。
その後、弁護士を通じて内容証明郵便を送付しましたが、相手男性は反省の態度を見せず、「既婚者だと知らなかった」「自宅に押しかけた行為は不退去・プライバシー侵害だ」と逆に主張してきました。
結果として訴訟に発展し、1年後に認められた慰謝料は30万円。
長期化した裁判により夫婦関係も悪化し、最終的に離婚となってしまいました。
冷静な対応と手順を踏んでいれば、より高額な慰謝料を回収し、離婚を回避できた可能性のある事案でした。
6.慰謝料請求を確実に成功させるためには弁護士に依頼すべき理由

(1)自分で慰謝料請求をした場合、半数以上が失敗している
これまで、自分で慰謝料請求を行うメリット・デメリット、具体的な方法について解説してきました。
結論として、自分で行うこと自体は不可能ではありませんし、実際に成功している事例も存在します。
しかし現実には、半数以上の方が交渉に失敗し、慰謝料を回収できないまま終わっているというのが実情です。感情的になってしまったり、手順を誤ったことで相手に主導権を握られ、結果的に泣き寝入りとなるケースも少なくありません。
不貞行為が発覚した直後に、当事者同士で面談し、独断で行動を起こすことは、弁護士の立場から見ると紛争を拡大させる非常に危険な行為でもあります。
(2)慰謝料請求は弁護士以外に依頼すべきではない理由
慰謝料請求については、司法書士や行政書士などに相談することも可能ですが、業務範囲には明確な限界があります。
特に、行政書士が示談書を作成し、実質的に代理交渉を行うケースも見られますが、これは非弁行為に該当する可能性が高く、リスクが大きいと言えます。
示談書を作るだけでなく、
・適正な金額での交渉
・相手から確実に回収すること
・トラブルを拡大させずに終わらせること
までを考えるのであれば、最初から弁護士に依頼するのが最も安全で確実な方法です。
| 参考:慰謝料を払わない確率は80%以上!?慰謝料をキッチリ回収するための方法とは? |
探偵社やNPO法人、その他離婚カウンセラーなどに至っては、慰謝料請求に関する法律相談を行うことは法律で禁止されています。しっかりと慰謝料を回収するのであれば、最初から最後まで対応可能な弁護士に依頼すべきです。

弁護士に慰謝料請求を依頼した場合、主に「着手金」「報酬金」「実費」が発生します。
着手金
依頼時に支払う費用で、相場は20万円〜30万円程度です。請求額や事案の内容によって多少前後しますが、大きく変わることはあまりありません。
報酬金
実際に回収できた慰謝料額に応じて支払う成功報酬です。
相場は獲得額の15%〜20%程度で、たとえば慰謝料200万円を回収できた場合、30万円〜40万円前後となります。
実費
交通費や通信費、郵便代、印紙代、内容証明郵便費用、訴訟費用、弁護士会照会費用、公正証書作成にかかる印紙代などが該当します。
なお、調停や審判、訴訟に進み、弁護士が同席する必要がある場合には、別途日当が発生することもあります。
まとめ
自分で慰謝料請求を行う場合、最も注意すべき点は感情的にならないことです。怒りに任せて暴力的な言動に出てしまえば、それまで積み上げてきた証拠や交渉の優位性は一瞬で失われてしまいます。
示談書などの書面は、必ず事前に作成し、2部用意して持参してください。朱肉を忘れるケースも多いため注意が必要です。書式についてはネット上に多くの雛形がありますが、不安がある場合は法律家に確認してもらうべきでしょう。
書類作成のみであれば、行政書士に依頼して3万円前後で対応してもらえることもあります。ただし、今回紹介した通り、成功事例がある一方で、取り返しのつかない失敗例も少なくありません。
夫婦の問題は、失敗すれば人生そのものが大きく変わります。十分な浮気の証拠が揃っているのであれば、よほどの事情がない限り、最初から弁護士に依頼することを強くおすすめします。
実際に現場では、「最初から相談してくれていれば防げたのに…」というケースを何度も目にしています。遠回りをせず、最も確実な方法として、まずは弁護士への相談を優先してみてください。
| 実際に不倫慰謝料請求の経験豊富で強い弁護士事務所なら四ツ橋総合法律事務所 |
