離婚の財産分与の割合は?退職金や年金などはどうなる?

離婚の財産分与の割合は?退職金や年金などはどうなる?

日本における離婚件数は、年々増え続けています。時間にすると1分30秒に1組が離婚している計算になります。さまざまな事情で離婚を決意した場合の離婚問題の中で、財産分与はその後の人生に大きく影響を与えることがらです。

年金や退職金は、老後の長い年月に関わってきますのでとても重要です。

また、住宅ローンはもめごとが起こりやすい問題です。特に、夫婦ともに所有名義を持っていたり、夫婦ともに債務を負っていることが多く、住宅ローンが残ったままの場合において自宅をどうするのか?という点については、非常に気になる点かと思われますし、実際の離婚時には、この住宅の処理をめぐって協議が難航する場面をよく目にします。

そういった財産分与について詳しく説明していきたいと思います。

1.財産分与とは婚姻中に築いた財産を分けること

離婚時に発生する最大の金銭問題が財産分与です。これは、婚姻中に築き上げた共有の財産を公平に分配することですが、対象となる財産、それぞれの割合、実際の分け方、等を正しく理解することが大切です。

基本的には、結婚してから夫婦で所有していた実質上の共同財産が対象にです。つまり、名義が夫婦共同でないものも、どちらか一方の収入だけで買ったとしても、すべて夫婦の共同のものと見なされます。

また、これらの財産は、基本的には夫婦平等の権利があり、2分の1ずつの分与ですが、その財産における貢献度(寄与度)によって、分ける割合が変わります。

1-1.法的に認められる財産分与の種類

一般的に使われる財産分与と法的な財産分与とでは、少し解釈の違いがあります。これは、法的な性質の解釈が複雑なため、財産分与の意味する範囲がひじょうに広いからです。そのため、通常使われる夫婦の共有財産の分与は、清算的財産分与といって、広い意味の財産分与の一部となります。

また、慰謝料に関しては、本来、財産分与とはまったく別のものですが、慰謝料的財産分与といって、財産分与の一部に含むことがあります。このほか、扶養的財産分与や婚姻費用の性質をもった財産分与もあります。

1-2.財産分与の4つの種類

(1)清算的財産分与

財産分与の中心になるもの。結婚してから夫婦で築いた共有財産の清算で、夫婦それぞれの取り分は、財産をつくる際の貢献度によって決められます。

(2)扶養的財産分与

離婚後の生活費の一時的な援助として支払われるもの。夫婦の一方が働けないなど、離婚後の生活に経済的な不安がある場合に、支払われることがあります。

(3)慰謝料的財産分与

慰謝料の意味合いを含んだもの。離婚による精神的な苦痛に対して、財産分与の中に十分に補てんされている場合は、離婚原因などによる慰謝料を請求することはできません。

(4)婚姻費用

婚姻中のいわゆる生活費のこと。離婚前であれば、別居中であっても生活費の支払い義務はあるので、その未払い分を財産分与の中で考慮して支払う場合があります。

1-3分与の割合

基本的に夫婦平等ではありますが、実際には夫婦の職業や収入などによって、その割合には複雑な配慮が必要になります。

借金も財産分与の対象

借金も財産分与の対象になります。実際に所有している財産をプラスの財産と呼ぶのに対して、借金はマイナスの財産。つまり、マイナスの財産があれば、プラスの財産から差し引いて考えなければなりません。

1-4.不貞を働いた妻ももらえる!?

たとえば、離婚の原因が妻の不倫にあった場合、不貞を働いた妻に非があるとして、「財産分与を受ける権利はない」と考える人が多いかもしれません。しかし、実際は不貞を働いた妻にも財産分与の権利があり、しっかりと財産を分配しなければなりません。

離婚原因がなんであれ、夫婦が結婚している間に共同で取得した財産は、離婚する際に公平に分け合うように法律で定められています。不貞があった、暴力をふるった、などといった離婚原因によって財産の取り分が減らされたり、受け取れなくなったりすることは原則としてありません。

しかし、不倫という原因をつくったことで、妻は夫に対して慰謝料を支払う義務が生じます。この慰謝料を別途に請求する場合と、財産分与の一部として計上する場合があります。後者の場合、仮に慰謝料が財産分与と同額になったら、これらは相殺されるので妻の取り分はなくなりますが、財産を分配しなかったということではありません。

2.離婚したら年金はどうなる?財産分与の対象となるのか?

従来、離婚時の年金の扱いについては、離婚後扶養の一要素として考慮するという立場の判例が多くあったため、年金については財産分与として扱われてきました。

しかし、平成16年6月の年金に関する法律の改正により、平成19年4月から年金分割制度が施行されました。これにより、年金が財産分与の対象となるかどうかの問題はなくなり、年金分割は財産分与とは別の問題として扱うこととなりました。

2-1.専業主婦でも年金をもらう権利はある!?

悩む

(1)年金分割制度とは

年金分割制度は,離婚後に片方配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し,それをもう片方の配偶者が受け取れるという制度です。この制度はまだ新しく平成16年に導入されました(国民年金法の一部を改正する法律)

誤解されている方も多いようですが、この制度は「厚生年金保険および共済年金の部分」に限り「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度です。国民の基礎年金である「国民年金」に相当する部分や、「厚生年金基金・国民年金基金」等に相当する部分は分割の対象にはなりませんし、また、「婚姻前の期間」の分は反映されません。さらに,将来受け取る予定の年金金額の2分の1をもらえる制度ではなく、保険料の納付実績の分割を受けるという制度ですので、その点は注意が必要です。

年金分割制度が導入された理由は、簡単に説明しますと、特に熟年離婚の場合の夫婦間の公平を実現するためです。たとえば、夫婦の片方のみが会社員として働いて収入を得て、もう片方の配偶者が専業主婦としてがんばって家事を行っていた場合を考えてみましょう。

この場合、年金保険料の支払には夫婦双方が貢献したといえるのに、夫婦の片方のみが厚生年金を全額受給できることは不公平ですよね。このように、片方の配偶者が年金保険料の支払に貢献した以上、そのいっぽう配偶者の年金受領金額に反映させることが公平であることから、この制度が導入されました。ですので、専業主婦の方でも年金をもらうことができるのです。

(2)注意!すべての年金が対象ではない

気をつけていただきたいのは、年金分割制度を利用するメリットがあるのは、あくまでも婚姻期間中に相手方が厚生年金・共済年金を自分より多く支払っていた場合のみとなります。国民年金は分割されませんので、夫が自営業者や自由業、農業従事者等の場合には、そもそも年金分割の制度を利用することができませんし、自分のほうが年金の受給額が多いのであれば、逆に年金分割を請求される立場になってしまいます。

また、年金受給を受ける本人が、原則として保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上にない場合には、年金受給資格が発生せず、せっかく年金分割をしても年金が受け取れないことになりますので注意してください。

2-3.年金分割する場合の手続き方法は?

年金の分割をするには、はじめに年金分割をする際の情報が詰まっている「年金分割のための情報提供通知書」という通知書を入手する必要があります。

この通知書は年金事務所で「年金分割のための情報提供請求書」という書類を提出すると入手でき、請求から手元に届くまで大体3~4週間くらいかかります。離婚前であれば請求した本人のみに通知書が送られ、離婚後であれば請求者本人と元配偶者の双方に送られます。また、原則郵送で送付されますが、離婚前で配偶者に年金分割を準備していることが知られたくないという場合は、年金事務所での窓口受取りや送付先の住所を指定することも可能です。

なお、「年金分割のための情報提供請求書」を提出するにあたっては、請求する方の本人確認書類、年金手帳、婚姻期間を確認できる書類(戸籍謄本、又は当事者それぞれの戸籍抄本)が必要となります。

「協議離婚」の場合

原則双方が年金事務所に一緒に行き、年金分割の改定請求を行います。どちらか一方が手続きをすることはできず、必ず2人一緒に行かなければなりません。必要な書類は「年金分割の合意書」、双方の戸籍謄本、双方の年金手帳が必要となります。

しかしながら、離婚した後に一緒に年金事務所に行くというのは嫌だという人も少なからずいるかと思います。その場合は、代理人が請求手続きをすることもできます。ただし、代理人が手続きをする場合でも、元夫の代理人と元妻本人、元夫本人と元妻の代理人、元夫の代理人と元妻の代理人というように必ず2人で一緒に行かなければなりません。

なお、代理人が手続きに行く場合は、必ず年金分割専用の委任状が必要となります。

このほか、協議離婚で公正証書、公証人の認証を受けた証書がある場合は、「年金分割の合意書」に代えてこれらの証書を添付すれば、2人一緒に行く必要はなく、どちらか一方が手続きすることが可能です。

「調停離婚」、「審判離婚」、「裁判離婚」の場合

調停、審判又は裁判で按分割合が決定された場合は、どちらか一方が年金事務所に行って手続きを行うことができます。その際に必要な書類は、調停等で決定された謄本、双方の戸籍謄本、年金手帳です。これで離婚時の年金分割の手続きは完了します。後日郵送で年金分割が決定した案内が年金機構から送付されてきます。

2-4.配偶者の扶養だった場合の、離婚後の手続き

年金は原則として20歳以上60歳未満の日本に住む人全ての国民の加入が義務づけられています。婚姻中に第3号被保険者だった人は、離婚後には第1号被保険者か第2号被保険者に変更する必要があり、就職して厚生年金や共済年金に切り替えるか国民年金の第1号となります。

もし離婚後に経済的に保険料の支払いが苦しい場合には、役所へ相談し、免除制度が利用出来ないか打診してみましょう。

第3号被保険者とは

第2号被保険者の扶養配偶者のことで、専業主婦やパート勤務されている方などのことです。因みに第2号被保険者とは、保険料が給料から天引きされているような会社員や公務員のことです。

ちなみに自営業者、農林漁業、学生などの保険料を自分で納付する方は第1号被保険者となります。

2-5.すでに支払われた夫の退職金や将来の退職金はどうなるのか?

考える退職金も年金と同様に、婚姻期間中のものに対しては財産分与の対象となりますが、既に支払い済みの金額と、まだ退職金が発生していない場合には考え方が異なります。

(1)すでに支払われた退職金

退職金のうち、婚姻期間に対応する部分の2分の1を請求できます。

例:勤続年数35年、婚姻期間20年、夫の退職金が800万円の場合の妻の取り分

800万(退職金)×24(婚姻期間)÷30(勤続年数)÷2(妻の取り分)=320万円

(2)将来的に支給予定の夫の退職金はどうなる?

勤続年数や退職金支給までの残存期間が影響しますので一概に言えませんが、推定される退職金支給額から婚姻期間に相当する額を算出して割合を計算します。この点については不確定な要素が多い為、話し合いによってか解決している部分が多くあります。

2-6.年金・退職金についての財産分与まとめ

さて、いかがだったでしょうか。年金の分割はすぐにできるものではなく段階を踏んでいかなければなりません。また、年金の分割は離婚が成立した日の翌日から起算して2年を経過する日までに請求手続きをしなければなりませんので注意が必要です。

通常、離婚協議をする際にあわせて年金分割の協議も行いますので、離婚の話が出たらとりあえず「年金分割のための情報通知書」を入手しておくとよいでしょう。

なお、3号分割制度は、年金手帳と双方の戸籍謄本を持っていけば情報提供通知書などを入手する必要はなく、自動的に按分割合が50%で年金分割を請求することができます。ただし、平成20年4月1日以降の国民年金第3号期間のみが対象なので分割できる期間が短く、現在のところ合意分割が主流となります。

 

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3.住宅の所有権を得た場合、残りの住宅ローンを払わなければならないのか?

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住宅を購入している場合、夫が自分名義でローンを組み自分名義で所有権登記を行っているケースが一番多くありますが、これ以外にも、所有権を夫婦で2分の1ずつ共有名義にしている場合があります。

ローンについても、夫婦ともにローン契約を締結している場合や、夫の住宅ローンを妻が連帯保証している場合もあります。こういった場合、離婚しても所有名義や債務、保証人が自動的に解消されることはありませんので、その点をはっきりと処理する必要があります。

財産分与で家(不動産)の所有権を得たとしても、住宅ローンは金融機関との契約なので、 ローンが残っているものを受け取る場合、残念ながら住宅ローンの名義は変わりません。自分は住まない家でも支払い義務があります。

3-1.離婚したら保証人としての責任はなくなる?

夫の名義で借りたローンの、連帯保証人に妻がなっていた場合、夫が支払いを滞らせた時点で、銀行(金融機関)からは連帯保証人である妻の元へローンの請求がやってくることになります。

夫からすると、自分が家を出て行く形になった時点で、ローン返済に対する責任感が薄れ、何故自分が住んでもいない家のローンを払わなければいけないのか?という感情から支払いをしなくなることがあります。だからこそ、離婚が成立して別居する前には、妻がその家に住み続けることになったとしても、銀行と協議して連帯保証人からは外してもらうようにしておいた方が良いです。

仮に支払いを無視し続けて住み続けたとしても、結果的には競売により立ち退くことになってしまいます。

【ポイント】

夫が住宅ローンを組んでおり、妻がそのローンの連帯保証人だった場合には、離婚後すぐに銀行と協議して連帯保証人から外れるべきです。

もし外れなければ、夫が、ローンの返済を滞った場合には、妻が支払うことになります。

 

3-2.住宅ローンが残っている住宅の財産分与はどのように決めるのか?

住宅ローンが残っている住宅を売却した場合には、損益を基準に考えます。

ローン残高よりも高い金額で売却できた場合の売却益については、財産分与の対象となります。

逆パターンのローン残高が売却金を上回っているオーバーローン(債務超過)状態の場合には、経済的価値は無く売却しても手元には全くお金は残らず、売却金額を差し引いたローン残高だけが残る形となります。

住宅ローンという負債についてどう考えるか?ですが、財産分与における借金についての考え方としては分与の対象では無く、各自がそのまま責任を負う形になります。

離婚を理由として名義を変えれることも、連帯保証から外してもらうこともできません。あくまで貸し手である銀行(金融機関)が承認する必要があります。離婚後に住宅ローンをどちらが払い続けるのか?支払いが滞った場合にどうするのか?は離婚前にしっかり協議し書面に残しておく必要があります。

売却を仮定し損益を算出した結果、売却せずにどちらかが離婚後も住み続けどちらかがローンを支払い続けるといった形をとるケースも多くあります。この場合には、離婚後の名義人やローンの負担者がどのようになるかによって、公平の観点から金銭での分与を検討する必要があります。

この点が非常に複雑なため、弁護士に相談するとよいのはないでしょうか?

3-3.住宅ローンを含めて名義変更することは可能か?

ローンの契約先である金融機関との話し合いになりますが、名義変更する方に一定の収入があり、金融機関(債権者)の審査と承諾があれば名義変更は可能となります。

住宅ローン付きマンションを分与した事例
  • 離婚時の評価額 2,000万
  • 住宅ローン残高 1,000万

このマンションを妻に名義変更することが可能で、分与割合は半々(50%ずつ)として妻が取得した場合

  1. 妻のマンション持ち分 2,000万(評価額)➗2=1,000万
  2. ローン負担分 1,000万(ローン残高)➗2=500万
  3. 妻はマンションの持ち分から、ローン負担分を差し引いた500万円(1,000万-500万)を支払い、単独で所有することになり、住宅ローン残高の1,000万を支払うことになります。

※この計算は簡易的な方法で算出しており、実際には税金なども含めたより複雑な計算が必要です。

3-4.住宅ローンの財産分与まとめ

財産分与で家(不動産)の所有権を得たとしても、住宅ローンの名義は変わりません。

財産分与の際は離婚後のトラブルを回避するために、離婚前に夫婦間であらかじめ話し合いをしておくべきでしょう。絶対に離婚協議書もしくは公正証書を作成しておきましょう。

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